bug-depayse Retrospective

May 2023

「bug-depayse Retrospective」 開催によせて

2000年、反=自由劇場として『わたしの旗は何処へ』(銀座歩行者天国でのゲリラ演劇、作・演出 宗方勝)で演劇という表現ジャンルに飛び込み、2003年にbug-depayseを3人のメンバーで立ち上げてから20年が経ちました。

その間、911からアフガン戦争、東日本大震災、新型コロナウイルス感染症の世界的流行など社会的な状況が様々と起こり、舞台芸術が持つ力の有義性や根拠のようなものがどの時代にも必然性を帯びて求められているのだと時節毎に痛切に感じています。そこで2023年5月6日に過去の作品やテーマ、作品の記録映像や資料などを紐解き、立ち上げ当初からbug-depayseを率いる演出家の宗方勝とその時期毎に関わっていた人たちや見守っていた方々をゲストにお呼びし、徹底的に語りつくし、bug-depayseは一体何を求めていたのか、何を表そうとしてるのかを検証するイベントをこのたび開催することとなりました。

作品自体が現代演劇からコンテンポラリーダンス・パフォーマンスアートとメディア映像や音響を融合させたポストシアターのスタイルに変容し、2010年に丸木美術館企画展「今日の反戦反核展」においてパフォーマンス『ケムリの中へ』を発表。2017年からは重度の障がいを持った方々との共同製作を行い、写真批評家の大嶋浩氏との共作による障がい者施設「やまゆり園」で起こってしまった大量殺人事件をテーマにした『使者たち』を発表(「東京バビロン演劇祭2017」次世代演劇賞受賞)、埼玉県行田市にあるNPO法人CILひこうせんとの共同企画として埼玉県北部の障がい者福祉施設の利用者の方々が出演した演劇作品『新説 雨ニモマケズ—世界の果ての夢物語』を手がけ、より社会性を帯びた問題意識の中から作品を製作してきました。

それらの作品の集大成として2019年には日暮里d-倉庫主催企画「現代劇作家シリーズ9 日本国憲法」において『彼について知っている僅かな事柄』を発表し、障がい者の方々の出演を通じてネーション=ステート及びデモクラシーの中で生きる日本人に突きつけたより高度なレベルでの障がい者をはじめとするマイノリティの問題を舞台芸術という形で発表しました。コロナ禍の中で製作した『PESTIS 拝啓 壁の中から』 は緊急事態宣言に伴い中止(映像配信として発表)となりましたが、人間のヒステリックな集団心理を浮き彫りにしリアリティのある同時代的な問題意識にあくなき追及と創作意欲で舞台芸術へと変容させ、その後、OM-2と柴田恵美氏との共同製作『椅子に座る–Mの心象スケッチ–』を発表し、社会と舞台芸術の相互関係を作り上げる作品製作を日々邁進して活動しております。

そこで20年の区切りをもって、これまでのbug-depayseの活動から現在の活動、今後の活動を観客へ提示しつつ、現代日本の社会的問題群をも浮き彫りにするイベントをこのたび開催することとなりました。

司会
宗方勝(bug-depayse)
卯ちり(怪談師、元bug-depayse)
トークゲスト
吉田悠樹彦(舞踊批評家)
Dohriki(舞踏家)
大嶋浩(写真批評家)
新井麻木(ギタリスト、作曲家)
ライブ演奏
ASK with 大場裕介(VJ、Archifact)
aBiSyEikh⊆(アビシェイカー)
作品上映
中島侑輝
森谷颯太